● 福岡県篠栗町(ささくりまち)携帯電話中継基地局の設置に関する条例
前文
ここ十数年の携帯電話の進歩と普及はすさまじく、私たち篠栗町民の生活の利便性を高めています。
それに伴い町内にも多数の携帯電話中継基地局が設置されています。
近年、新世代携帯電話の普及により、新たに中継基地局が事業者各社の競争で建設されています。
この建設をめぐり、地域住民への事前の説明が行われず住民の合意がないまま建設が行われるため、紛争となる場合もあります。
紛争の主な理由は、基地局の発する電磁波による特にこどもの脳腫瘍・白血病などの発がん性のおそれやペースメーカーへの
悪影響の可能性が指摘されているためです。
また中継塔や基地局の倒壊のおそれ、周辺環境・景観の破壊、落雷被害・電波障害の可能性などにもよります。
紛争を未然に防止し、町民にとって安心・安全なまちづくりのため、携帯電話中継基地局の適正な設置・改造および管理運営に関する
条例を制定します。
(目的)
第1条 この条例は、携帯電話中継基地局の設置・改造および管理運営について基本理念を定め、篠栗町(以下「町」という。)、
事業者の責務および町民の役割を明らかにし、基本理念に係る施策の基本的事項を定め、もって現在及び将来の町民が安心・安全な
生活を営むことができる良好な生活環境の実現に資することを目的とします。
(定義)
第2条 この条例において「携帯電話中継基地局」(以下「基地局」という)とは、既存の電話網と携帯電話の間を中継する、電波塔を含めた
建築物の高さが15mを超える送受信兼用の設備をいいます。
2 この条例において「事業者」とは、携帯電話通信会社をいいます。
3 この条例において「事業計画」とは、基地局建設の位置・規模・構造、設備の内訳と重量、使用電磁波周波数、総アンテナ入力電力(出力)、
供用範囲をいいます。
4 この条例において「近隣住民」とは、基地局の供用範囲内の住民および事業所の生活者をいいます。
(基本理念)
第3条 基地局の適正な設置・改造および管理運営は、携帯電話の利便性を担保しつつ、すべての町民が安心・安全な生活を営むことができる
良好な生活環境を維持することを目的として行われます。
2 基地局の適正な設置・改造および管理運営は、町・事業者および町民が互譲の精神をもって推進します。
(町の役割と責務)
第4条 町は、事業者に基地局の設置・改造計画の事前協議書および事業計画の提出を求めます。事業計画を近隣住民に公表します。
2 町は事業者に、近隣住民への説明会の開催について要請します。
3 町は事業者の説明会開催の後、近隣住民から不同意の意思が表明された場合は、調停にあたり、合意形成に努めます。
4 町はすでに稼動している基地局から発せられている電磁波の状態について問い合わせなどがあった場合は、総合通信局ならびに事業者へ
調査の依頼をし、その結果を公表します。
(事業者の役割と責務)
第 5 条 事業者は、基地局の設置・改造にあたり、建築確認申請が必要な建設行為またはそれが不必要な建設行為に係わらず、工事着工前に
町へ事前協議書及び事業計画を提出します。
2 事業者は、町との協議後、近隣住民に周知のうえ説明会を開催し、基地局の設置・改造への近隣住民の理解を求めます。
3 事業者は、事業計画が近隣住民の理解の下に進められるように十分配慮します。
4 事業者は、基地局の設置・改造行為に係る建築物倒壊の危険性や近隣環境・景観の保全に十二分に留意し、安全・保全対策に努めます。
またテレビなどへの電波障害や落雷による家電製品の故障などが起こらないように努めます。このような事態が発生し近隣住民などに被害を与え、
基地局設置・改造行為との因果関係が推測される場合は事業者の責任で補償の協議をします。
5 事業者は、基地局の設置・改造を行なう場合、その計画地が保育園・幼稚園・小中学校・児童館・病院・介護施設から、また通学・通園路から
なるべく離れた地点となるよう努め、周辺環境に十分配慮するとともに必要な措置を講じるよう努めます。
(近隣住民の役割)
第6条 近隣住民は、事業者による説明会に積極的に参加し、十分な内容検討のうえ、意思の表示をします。
(申入れ・公表)
第 7 条 事業者が第5条第1項・第2項の手続きを行なわず工事に着手した場合、第5条第1項の事業計画と異なる設置改造工事を行なった場合、
町は改善や是正の申入れを行います。
2 事業者がこの申入れに反し、改善または是正の措置を行なわない場合は、町はその事実をあげ事業者名を町政だより・ホームページなどで公表します。
(委任)
第 8 条 この条例の施行に関し、必要な事項は町長が別に定めます。
附則
(施行期日)
この条例は、平成19年2月1日から施行します。
● 岩手県滝沢村の電磁波、低周波に関する環境条例
9 電磁波、低周波による被害の未然防止
<個別目標>
予防原則に基づき、住民の命と健康を守るため、電磁波、低周波についての情報収集に努めます。
<現状>
@電磁波問題
電磁波とは、電場と磁場がからみあって真空中や空気中を高速で伝わる波のことをいい、その発生源としては私たちが日常使う電化製品や
携帯電話、送電線などがあります。
村内には、盛岡市内を避けるかたちで高圧送電線が走っており、特に一本木地区や滝沢ニュータウンの住宅密集地の上空には、154,000Vの
高圧線がとおっています。線下の住民からは健康に対する不安や騒音、景観などの面から苦情が寄せられ、住民集会が開かれるなどの行動も起こっています。
今のところ、電力会社からは住民不安を解消するような改善策は示されていません。また、携帯電話やPHSの爆発的な普及により、村内各所にも中継タワーが
次々に建設されています。
携帯電話やPHSによる健康被害については、まだ明らかになっているわけではありませんので今後の研究にゆだねるとしても、例えば、ペースメーカーの利用者に
生命の危険が及んだりする事例が報告されていますし、精密機器に重大な影響を与えるおそれがあるとして、飛行機や病院内などでは使用が完全に禁止されています。
A低周波問題
低周波とは、人間の耳では聞き取りにくい非常に低い音(100Hz以下の低周波)や、まったく聞こえない空気の振動(20Hz以下の超低周波)のことをいいますが、
それが原因で、頭痛、不眠、吐き気、不定愁訴(はっきりした原因がないのに体の不調を訴えること)や建物、家具をガタガタ揺さぶるなどの被害を発生させることが
知られています。発生源としてコンプレッサー、ボイラーなどの大型機械や自動車、電車などの輸送機器、エアコンなどがありますが、この他に列車が高速でトンネルを
出入りするときや高速道路の高架橋が振動して発生することもあります。
低周波のやっかいなところは、個人差のあることです。例えば、同じ家屋に住む家族でありながら、一人だけしか被害を感じないといったケースがあるからです。
村でも平成12年に住民の方から苦情を受け付け、対応した事例があります。
テキスト ボックス: 予防原則に基づき、住民の命と健康を守るため、電磁波、低周波についての情報収集に努めます。
Bその他
平成14年(2002年)10月1日、台風21号の影響で茨城県内の鉄塔が倒壊するという事故があり、電磁波問題に加え新たな住民不安の材料となっています。
<動向>
@電磁波問題
私たちの目には見えない電磁波問題は、不安を抱きつつもこれまでは電力会社やメーカー側が主張する安全性を認知するかたちで進んできました。
しかし、平成13年(2001年)10月にWHO(世界保健機関)傘下の国際ガン研究機関(LARC)などで「発ガンの可能性がある」との見解を公表、
日本でも平成14年(2002年)8月に国立環境研究所などによる初の全国疫学調査で、電磁波と発症の因果関係は明確ではないとしながらも
「子どもの白血病の発症率が2倍以上になる」(日常環境の電磁波の平均値は0.1マイクロテスラ前後ですが、0.4マイクロテスラ以上の環境だと発症率が
2倍以上に増える傾向あり)という中間解析の結果が公表されています。また、電磁波によって脳内の松果体にある「メラトニン」というホルモンが失われ、
さまざまな障害(睡眠障害など)が引き起こされるという研究結果も発表されています。
ドイツ、イタリア、イギリスなどの欧米諸国では携帯電話に対する疫学的な調査が始まっていますし、わが国でも総務省などが中心となって調査を行っています。
電磁波問題は日本では緒についたところにありますが、欧米諸国では「21世紀の公害」といわれるほど関心が高いとされています。
A低周波問題
平成12年度(2000年)に全国で45件の低周波による苦情を受け付けています(環境白書)が、その内訳を見ると工場や事業場からのものが21件で、
他に原因不明のものも報告されています。
国では、低周波問題の改善を図るため平成12年(2000年)10月に「低周波音の測定方法に関するマニュアル」を策定し、地方自治体に送付しました。
これは、統一的な方法で測定された精度の高いデータを集積することにより、これまでよく分かっていない生活環境での低周波音の実態や低周波音を発生させる
機器の状況を把握するなど、低周波音対策の推進に向けての知見を収集するためのものですが、まだ緒についた段階です。なお、環境省の調査で新幹線「のぞみ」が
原因と思われる低周波振動が西日本各地で報告されており、東北新幹線盛岡以北の開通に伴って本村でも同様の問題の発生が心配されています。
<村の基本的姿勢>
○予防原則に立ち、電磁波、低周波による被害を未然に防ぐように努めます。
<村の取り組み>
・電磁波、低周波に関する情報を収集、公表し、住民に対する啓蒙を図ります。
・村内における電磁波、低周波被害の情報の収集に努めます。
・携帯電話やPHSの中継タワーの設置状況および新設の情報把握に努め、その結果を公表します。
・電磁波、低周波を発生させる設備、機器を取扱う事業者に対し、その発生状況、強度、およぶ範囲などの情報開示を求めます。
・事業者が設備、機器を新設または増設する場合における事前協議制度の確立を目指します。
・近隣騒音の原因にもなっているエアコン、ボイラーなどの管理の徹底を利用者に促します。
・相談窓口を開設し、住民不安の解消に努めます。
<住民の取り組み>
・携帯電話やPHSから発生する電磁波は、ペースメーカーの利用者の生命に危険がおよぶことがあるので、使用場所に配慮します。
また、精密機器に影響があるので、病院や飛行機、電車バスなどの公共交通機関内などでは使用しません。
・強い電磁波を出す家電製品(テレビ、パソコン、電子レンジ等)からなるべく距離をとり、長時間使用しないようにします。
・家電製品を使用しないときは、主電源を切るか、コンセントから抜くなどして電磁波の発生を抑えるようにします。
・低周波による何らかの影響を感じたときは、その状況を記録し村に報告します。
<事業者の取り組み>
・製品や設備、施設から発生する電磁波、低周波の人体等への影響を自ら把握し、その情報を一般に公表するよう努めます。
・電磁波、低周波の発生を抑えた製品の開発や設備、施設の改善に努めます。
・携帯電話やPHSの中継タワーを設置する場合には、シールドを施したり、周辺の土地を十分確保するなどの対策を講じます。
・付近住民からの苦情には、誠意を持って対処します。
<進行管理調査指標>
項 目
電磁波、低周波苦情処理件数