発表日:2007.8.31
バイオイニシエイティブ報告:
「電磁波(ELF とRF)の生物学的影響に基づいた
公衆被曝基準の論理的根拠」

構成委員:
Carl Blackman, アメリカ
Martin Blank, アメリカ
Michael Kundi, オーストリア
Cindy Sage, アメリカ

協力者:
David Carpenter, アメリカ
Zoreh Davanipour, アメリカ
David Gee, デンマーク
Lennart Hardell, スウェーデン
Olle Johansson, スウェーデン
Henry Lai, アメリカ
Kjell Hansson Mild, スウェーデン
Eugene Sobel, アメリカ
Zhengping Xu とGuangdin Chen, 中国

調査協力者:
S. Amy Sage, アメリカ


バイオイニシエイティブ : 電磁放射線に関する生物学に基づいた被曝
基準に関する論理的証拠

セクションI 序文
セクションii 目次
セクション1 一般の人々のための要約と結論
Sage 氏
セクション2 問題の提示
Sage 氏
セクション3 現在の公衆被曝基準
Sage 氏
セクション4 基準の不適切性に関する証拠
Sage 氏
セクション5 遺伝子とタンパク質出現に関する影響の証拠
Xu 博士とChen 博士
セクション6 遺伝子毒性影響の証拠.RFRとELF DNA損傷
Lai 博士
セクション7 ストレス反応(ストレスたんぱく質)に関する証拠
Blank 博士
セクション8 免疫機能の影響に関する証拠
Johansson 博士
セクション9 神経学と行動の影響に関する証拠
Lai 博士
セクション10 脳腫瘍と聴神経腫に関する証拠
Hardell 博士、Mild 博士、kundi 博士
セクション11 小児がん(白血病)に関する証拠
Kundi 博士
セクション12 磁場への被曝:メラトニン産生、アルツハイマー病、乳がん
Davanipour 博士とSobel 博士
セクション13 乳がん促進に関する証拠
(実験研究と細胞研究におけるメラトニンのつながり)
Sage 氏
セクション14 変調信号による混乱に関する証拠
Blackman 博士
セクション15 電磁場の医学的治療に基づく証拠
Sage 氏
セクション16 予防原則
3
Gee 氏
セクション17 重要な証拠と公衆衛生政策の勧告
セクション18 参加者と協力者のリスト
セクション19 専門用語と略語の解説
セクション20 付表.環境のELF とRF レベル
平均的な住居と職業被曝
セクション21 謝辞


セクション1 一般の人々ための要約
T. 一般の人々のための要約
A, イントロダクション
 あなたはそれを見ることも、味わうことも、嗅ぐこともできないが、現在の工業化さ
れた国々では、もっとも広く蔓延した環境曝露の一つだ。電磁波(EMR)や電磁場
(EMFs)は、無数の利益をもたらす方法で私たちが暮らす風景を変えてきた、大量の
有線・無線技術によって作られた被曝を大まかに示す言葉だ。しかし、これらの技術は、
エネルギー効率と利便性を最大限にするために考案され、人々への生物学的影響は考慮
されていない。新しい研究に基づき、これらの技術と関わる潜在的な健康リスクについて、
社会と科学者の間で証拠が増えている。

 人間の生命は生体電気システムだ。私たちの心臓と脳は、体内の生体電気信号で調整
されている。人工的電磁場への環境被曝は、人体の基本的な生物学的プロセスと互いに
影響し合う。これは、不快さと病気を引き起こす場合がある。第二次世界大戦以降、ごく
最近では携帯電話(2006 年に20 億台と計算されている)やコードレス電話、WI-FI
(訳注:無線LAN)やWI-MAX(訳注:高速無線通信)ネットワークのような無線技
術の人気が高くなったことで、電気的発生源からの電磁場のバックグラウンドレベルは
急激に増加した。数十年間にわたる国際的な科学的研究は、電磁場は動物と人間に対
して生物学的活性を持ち、重要な公衆衛生の結果につながるかもしれないことを裏付けた

 現在の世界では、全ての人が2 種類の電磁場に被曝している。(1)電気製や電子機器、
送電線から発生する超低周波(ELF)電磁場と(2)携帯電話、コードレス電話、携帯電話
のアンテナや基地局、放送送信施設のような無線装置から発生する無線周波数電磁波
(RF)だ。この報告書では、私たちは電磁場という言葉を、一般的に全ての電磁場を
指す場合に使い、ELFとRF という言葉は、被曝の特定の型を指す時に使う。それらは
どちらも非電離放射線で、エックス線やCT スキャン、その他の電離放射線のように、
原子やイオン化(電荷)した原子の周囲にある軌道から、電子を引き離すほど十分な
エネルギーを持っていないことを意味する。解説と定義は、あなたを助けるために
セクション18 に用意した。この要約の章で、ELF とRF(その測定に関する言葉)について
読む時、あなたが必要とするかもしれない手頃な定義は、この章の参考文献の項で示す。

B. 報告書の目的
 
この報告書は14 人の科学者、公衆衛生と公衆政策の専門家によって、電磁場の科学的
証拠を立証するために書かれた。12 人の外部の評者が調べ、報告書を精緻なものにした。
 この報告書の目的は、現在の公衆被曝限度値以下の電磁波の健康影響に関する科学的
証拠を評価し、将来の公衆衛生リスクの潜在的な可能性を減らすために、現在の基準で
どのような変更が正当だと認められるのか、その数値を求めることだ。
 この問題については、まだ全てが明らかになっていない。しかし、世界のほとんど全ての
国で、電磁波レベルを制限する現在の公衆安全基準が数千倍緩いのは明らかで、変更が
必要だ。
 新しいアプローチは、被曝の発生源について一般の人々と政策決定者を啓蒙するために、
そして同レベルの潜在的な健康リスクがない選択を見つけるために必要とされる。
一方、変革するための時間がまだある。

 科学者と研究者、公衆衛生政策の専門家からなるバイオイニシェイティブ・ワーキング・
グループは、現在の公衆被曝基準の適切さ(または不適切さ)に関する国際的な
議論で考慮されるべき情報を、証拠に基づいて立証するために参加した。
 この報告書は、国際的な研究の結果で、弱い電磁場(無線周波数電磁波[RF] と
電力周波数[ELF]の両方について、そして生物活性があることが分かっている複合
的な被曝のさまざまな形態について)で発生する生物学的影響で何がわかっているのか、
全体像を与える公衆政策の第一歩だ。報告書は研究と現在の基準を検討し、それらの
基準が適切な公衆衛生保護から、ほど遠いことを発見した。
 アメリカ、イギリス、オーストラリア、多くのEU諸国と東欧諸国の団体が世界保健
機関(WHO)と同様にこの問題を活発に議論してきたことを正式に認め、バイオイニ
シェイティブ・ワーキング・グループは、独立した科学と公衆衛生政策の批評過程を
まとめてきた。この報告書は、この問題に関する確固とした科学を提示し、政策決定者
と一般の人々に勧告する。各著者の結論と、相対的な結論は表2-1(訳注:未訳)で示す。

 弱い電磁場の影響を確認する重要な科学的研究と批評を引証した計11 章は、
バイオイニシェイティブ・ワーキング・グループのメンバーによって書かれた。セクション16
とセクション17 は、公衆衛生と政策専門家によって用意された。これらのセクションは、
どんな証拠が公衆衛生計画に用いられるべきか、慎重な公衆衛生政策の場面で
科学的情報がどのように評価されるべきか、利用できる知識に応じた予防的行動と
用心のための行動を採用する根拠を確認するための証拠の基準を議論する。
新しい公衆安全制限の勧告につながるELF の科学的証拠も評価した(予防的行動や
用心のための行動ではなく、必要性を実証するために)。
 その他の科学的評価団体や学会は、新しい公衆安全制限につながるかもしれない
あらゆる結果を除外するほど、不合理性が高い証拠の基準を採用することで、私たちと
異なった結果に達していた。いくつかの団体は、現在の(そして不適切な)基準を緩める
よう、実際に勧告している。なぜ、こんなことが起きたのか。理由の一つは、ELFとRFの
被曝制限が、伝統的に勧告を作ってきた専門機関に属する科学者と技術者の団体に
よって作られ、政府機関がそれらの勧告を採用してきたことだ。基準設定のプロセスは
少なく、たとえあったとしても、利害関係がある外部の専門的技術者や商業上の関心と
密接に結びついた利害関係者から提供される。公衆衛生の専門家が定めたものを受け
入れるというよりは、許容できるリスクと有害さの証拠に関する企業見解の影響力が最も
大きい。

専門家の間の不一致に関する主な理由
1) 科学者と公衆衛生政策の専門家は、科学を評価するために使う証拠の基準に、
非常に異なった定義を使う。そのため、彼らは何をするべきかについて異なった結論に
達する。科学者には役割があるが、その役割は科学者だけに限られたものではないし、
人々の意見も重要だ。

2) 私たちは同じ科学的研究の重要さについて協議しているが、「証拠が十分になって
いるか」または「証拠が存在しているかどうか」を判定するために、異なった方法を使う。

3) 専門家の中には、影響が存在すると満足して言う前に、全ての研究が一致
(いつでも、同じ方法で結果が現われる)しなくてはいけない、と主張し続ける人もいる。

4) 短期間の急性影響だけを見れば十分だ、と考える専門家もいる。

5) 他の専門家は、私たちがどういう種類の世界に住んでいるかということなので、
長期間かけて研究すること(慢性被曝の影響を示す)が絶対に必要だと主張する。

6) 子ども、高齢者、妊婦、病人を含む全員が考慮されるべきだ、と言う専門家もいる
他の専門家は、平均的な人(またはRF の場合、6 フィート[訳注:約1.8m]の身長
の男性)の問題だけだという。

7) 被爆していない人がいないので、病気の増加リスクを確かめることが難しくなる。

8) 作用の単一の生物学的メカニズムについて意見の一致が不足している。

9) 人間の疫学研究の結果は、ELF とRF 被曝のリスクを報告しているが、動物実験は
強い毒性影響を示していない。

10)社会的関心の大きさは、衛生議論に重大な影響を与える。

公衆政策決定
電磁場への公衆被曝の安全限度値は、科学者だけでなく、公衆衛生の専門家、
公衆政策作成者、一般市民の間の交流の原理に基づいて作られる必要がある。

「原則として、証拠の評価は、その他の社会的価値、たとえば経費と利便性、リスク
の受容性、文化的な優位性などの判断に結びつき、妥当で効果的な意思決定に至るべき
だ。これらの問題の決定は、結局、プロセスに参加する利害関係者の目的、価値、関心の
機能として得られる。参加した利害関係者の見解は、いくつかの要因によって慎重に考慮
される。科学的証拠の究明は、おそらく今後も続き、また続くべきだが、かなり重責で、
閉鎖的な状況を認めない。決定は証拠に基づくだろうが、その他の要因にも基づくだろう」
(1)
 
 バイオイニシェイティブ・ワーキング・グループのメンバーの明確な意見の一致は、
現在の公衆安全限度値はELF とRF のどちらも不十分だということだ。
これらの提案は、弱いELF とRF への慢性的な被曝について、明らかに安全だと主
張できない、という証拠を反映する。その他の多くの環境曝露の基準のように、これら
の提案された限度値は完全に防護できないかもしれないが、より厳しい基準は、今の
ところ、現実的ではない。がんや神経変性疾患(訳注:アルツハイマー病やパーキンソン
病など、神経細胞が変性する病気の総称)のわずかなリスク増加でさえ、非常に大きな
公衆衛生の結果に変わる。ELF の調節行動とRF の予防的行動は、今のところ、被曝
を減らし、リスク増加の潜在的な可能性(どんなレベルの慢性被曝にリスクが存在する
かもしれないのか、リスクを減らすためにどんな方法がとられるのか)を人々に知らせる
正当な理由となる。

C.  現在の公衆衛生基準(安全限度値)の問題
電話通信に関する今日の公衆被曝限度値は、生体が被曝する際の唯一の心配は
組織の加熱作用(RF について)と体への電流誘導(ELF について)だ、という仮定に
基づいている。これらの被曝は、非常に短期間の量でさえ有害な事がよく知られており、
組織の加熱作用を引き起こす。加熱作用を規制する点では、熱制限は目的を果たしている。
たとえば、レーダー施設やRF 熱融着機の周りで働く職業の人や、無線アンテナ基地局
設置する人にとって、熱効果に基づいた限度値は熱からの(電力周波数ELF の場合、
組織に電流を誘導する)ダメージを防ぐために不可欠だ。これまで科学者と技術者は、
私たちが現在、欠陥があると確信している仮定に基づいて、電磁波の被曝基準を作った。
それは、組織の加熱作用(RF) や体に誘導された電流(ELF)しか評価しないという危険性
がなければ、どのぐらいの非電離放射線エネルギーを人間が許容(被曝)できるかを
評価する正しい方法だった。

 過去数十年間、加熱作用(または誘導電流)が全く発生しないはるかに弱いレベルの
RF とELF 被曝で、生物影響や何らかの有害な健康影響が起きるという論理的な疑いを
考えずに、限度値は設定されてきた。いくつかの影響は、加熱作用が不可能な現在の
公衆安全限度値の数十万分の一で発生することが示された。

 それは、(熱よりも)生物学的変化を引き起こす電磁波によって伝達された情報の
ように見える――それらの生物学的変化のいくつかは、ウェルビーイング(訳注:
健康で幸福な状態や満足すべき健康状態)の喪失、病気、そして死にさえもつながる
かもしれない。

 影響は、連邦政府機関が公衆の安全性を保つべきだ、と主張するレベルの数千分の一
の弱い被曝や非熱被曝で発生する。無線技術で操作する数多くの新しい装置について、
その装置はいかなる法令基準も免除されている。科学的文献の論理的で独立した評価に
基づく弱い電磁場への慢性被曝の有害性を管理するには、現在の基準は不適切だ、証明
されてきた。それは、新しい被曝基準のために、完全に新しい根拠(生物学的根拠)が
必要だ、ということを意味する。新しい基準は、ELF とRF(全ての非電離電磁放射線)
について私たちが学んだ事を考慮し、生体の生物学的機能を適切にするために重要な、
生物学的に実証された影響に基づく新しい限度値を立案する必要がある。それは生命の
維持に必要だ。新しい発生源の爆発的な増加は、地球上の居住地域から離れた地域以外、
今や全世界を覆う、前例のない人工的な電磁場の高さを作り出してきたからだ。世界的
規模の公衆衛生問題が起こるのを防ぐために、ELFとRF に私たちを被曝させる新しい
技術を、私たちが受け入れ、テストし、配置する方法で、中間点での修正が必要とされる。

 専門家による最近の見解は、現在の被曝基準の不完全性を立証してきた。熱制限は
時代遅れで生物学に基づいた被曝基準が必要だ、という議論が広く普及している。
セクション4 は、WHOの2007 年のELF 健康基準論文、欧州委員会(EC)のために
用意された2006 年のSCENIHR報告、2007 年のイギリスのSAGE報告、2005 年
イギリスの健康防護局、2005 年のNATOの高等研究ワークショップ、1999 年のアメリカ
合衆国無線周波数中間的政府機関ワーキンググループ、2002 年と2007 年のアメリカ
食品医薬品局、2002 年の世界保健機関、国際がん研究機関(IARC、2001 年)、
2000 年の携帯電話に関するイギリス国会独立専門家グループ報告(スチュワート報告)
とその他で示された懸念を記した。

パイオニア的研究者、故Ross Adey 博士は、『バイオ・エレクトロマグネティック・
メディシン』における最後の論文で次のように結論づけている。

 「潜在的な健康リスクについて、答えの無い重大な疑問がある。それは断続的で、
頻発する様々な人工的な電磁場に被爆することから生じ、人々の一生の重要な部分に
わたって拡大するかもしれない」。

 「疫学研究は、人間の健康にとってELF とRF 場は、リスク上昇にかかわる歴史的
な証拠をもって、人間の健康にリスク要因の可能性があると評価した。歴史的な証拠と
は、たとえば、発展的な田舎で電化が進むこと、もっと最近では、ビルディングの電力
線の配線と利用などだ。これらの生物影響を示す適切なモデルは、全体の特徴として、
非線形電気力学の非平衡熱力学に基づく。平行熱力学に基づいた加熱モデルは、大変
重要な意義のある印象的な未知の領域を説明することに失敗した。……不完全な理解
だが、磁場と相互作用する組織のフリーラジカルは、ゼロ磁場のレベルへ及ぶかもしれ
ない」。(2)

 私たちに影響を与えない被曝の下限は無いかもしれない。生物影響と健康に有害な
影響が発生しない下限があるか分かるまで、ELF とRF被曝、とくに不本意な被曝を
増やす新しい技術を開発する「いつもどおりのビジネス」を続けることは、公衆衛生
の全体像から言って愚かである。

U. 科学の要約
A. がんの科学的証拠
1. 小児白血病
 送電線とその他のELF 発生源が小児白血病の高い発症率に関係がある、という一貫
した科学的証拠は、国際がん研究機関(IARC、世界保健機関の一部門)で人間に対し
て発がん性の可能性があるかもしれない(発がんリストグループ2B)と分類される結果に
つながった。小児白血病は、子どものもっとも一般的ながんのタイプだ。

ELF への被曝が小児白血病を引き起こすという小さな疑いがある。

 リスクを増やす被曝レベルはきわめて低い――ちょうどバックグラウンドか、環境中
の被曝レベルの上で、現在の被曝限度値よりもはるかに低い。現行のICNIRP 限度値は、
ELF の場合1000mG(アメリカでは904mG)だ。小児白血病の増加リスクは、安全基準
の約1000 分の1 以下のレベルで始まる。幼い少年の白血病リスクは1.4mG 以上で
2倍になる、とある研究で報告された(7)。ほとんどの他の研究は、幼い子ども(0~16
歳)と年長の子どもを結びつける。その結果、リスクレベルは、被曝が2mG か3mG
になるまで、統計学的な有意性に達しない。しかし、いくつかの科学的批評は、リスク
レベルが4mG 以上で始まることを示す方法で、小児白血病の研究を結びつけた。
これは、2mGや3mGの低い被曝レベルでリスクが上昇することを報告する、数多くの
研究を反映していない。

2. その他の小児がん
脳腫瘍を含むその他の小児がんが研究されてきたが、リスクがあるかどうか、それら
のリスクがどのくらい高いのか、リスク増加にどの程度の被曝レベルが関係するのか、
を知るための十分な研究は行われていない。その他の小児がんについて確実性が不足
していることを、「大丈夫だ」という合図だと受け取るべきではない。むしろ、それは研究が
不足していること示す。

 世界保健機関ELF 健康基準論文No322(2007 年)は、その他の小児がんを「除外する
ことはできない」と言っている(8)。

 その他の小児がんがELF 被曝に関わる科学的証拠がいくつかあるが、充分な
研究は行われていない。

 いくつかの最近の研究は、ELF が小児白血病と後生のがんのリスク要因である、
というさらに強い科学的証拠を示した。最初の研究によると(9)、高いELF 環境で療養
していた子どもたちは、生存率が低い(ELF場が3mG以上だと死亡リスクは450%増加)。
2番目の研究によると、2mG以上のELF環境で療養していた子どもたちは、被曝が1mG
以下の子どもより300%多く死亡するようだ。この2 番目の研究で、1~2mGのELF環境で
療養していた子どもたちも生存率が低く、死亡の増加リスクは280%だった(10)。
これらの2 つの研究は、子どものELF 被曝は1mG以上のレベルでさえ有害だ、という
強力な新しい情報を与える。三番目の研究は、高圧送電線から300m以内の家に住んで
いると、子どもが将来、何らかのがんのリスクを持つことを示す(11)。300m以内に
生まれてから5 年住んだ子どもは、何らかのがんのリスクを発症するリスクが500%高く
なる。

小児白血病の子どもと療養している子どもは、ある研究では家(または療養している
場所)でのELF 被曝が1~2mG、他の研究では3mG以上だと生存率が低い。

 ELF に関する小児白血病のリスクの延長した研究と、2~4mG帯における被曝が
子どもに対するリスク増加に関わるという一貫した結果を受けて、居住空間では
新しい建造物について1mGの限度値が勧められる。現存する居住空間を1mGレベル
に改良するのは困難で費用がかかるが、現存する居住空間と子どもや妊婦が
長期間過ごすかもしれない場所でも、好ましい目標として勧められる。

 新しいELF 公衆被曝限度値は今、存在する科学的証拠と公衆衛生政策の介入と
予防の必要性を受けて、正当に認められる。

3.脳腫瘍と聴神経種
 携帯電話とコードレス電話からの無線周波数電磁波は、脳腫瘍や聴神経腫(脳の中の
聴覚神経の腫瘍)のリスク増加に関する、1 ダース以上の研究につながった。

 携帯電話を10 年以上使っている人は、悪性脳腫瘍や聴神経腫の発症率が高い。
携帯電話を、主に頭の同じ側で使っているといっそう悪い。

 脳腫瘍について、10 年以上携帯電話を使っていた人はリスクが20%高い(携帯電話
を頭の両側で使っていた場合)。主に頭の同じ側で10年以上携帯電話を使ってきた人は、
脳腫瘍のリスクが200%増加する。この情報は、多数の脳腫瘍/携帯電話の総合的な
研究(研究のメタ解析)の結びついた結果を信頼してまとめている(訳注:メタ解析とは、
複数の研究データを集めて解析すること)。

 10 年以上コードレス電話を使ってきた人は、悪性脳腫瘍や聴神経腫になる率が高い。
主に頭の同じ側で、コードレス電話を使っているとさらに悪い。

 コードレス電話使用の脳腫瘍(高悪性神経こう腫)のリスクは、頭の両側で使った場合
220%高く、主に頭の片側に充てた場合470%高い。

 聴神経腫の場合、携帯電話を10 年以上の使うとリスクが30%高くなり、主に頭の一方
で使うと240%高くなる。これらの結果は、いくつかの研究(メタ解析)の結びついた結果に
基づいている。

 コードレス電話の場合、電話を主に頭の片側にあてて使った場合、聴神経腫のリスクは
3 倍(310%)高くなる。

 携帯電話とコードレス電話の照射への被曝に関する現在の基準は、長期間の脳腫瘍と
聴神経腫のリスクを報告する研究を慎重に検討していない。

 無線周波数電磁波(RF)が脳腫瘍を発症させるという兆候は、携帯電話やコードレス
電話使用以外の弱いRF への被曝からも現れる。職場で被曝する人々の研究(職業被曝)
は、同様に、脳腫瘍率が高い事を示す。Kheifets(1995)は、電機関連の職業で働く人々
の脳のがんのリスクが10~20%高いと報告した。このメタ解析は、職場の電磁場被曝や
電気関連の職業に関する、脳のがんについて発表された29の研究を調査したものだ(6)。
電磁場に被爆する職業で働くような、その他のRF 被曝発生源との関連性の証拠は、
脳腫瘍になる穏やかなリスク上昇と一致する。

4.その他の大人のがん
被曝評価の大きな制約があるにも関わらず、職業被曝と成人の白血病(11 章参照)の
統計学的に有意な関連性を示す多数の研究が存在する。Lowenthal ら(2007)による
ごく最近の研究は、高圧送電線に近い住居と成人白血病の関連性を調査した。彼らは、
高圧送電線の近くに住む全ての成人でリスク上昇を発見したが、送電線の300m以内で
生まれてから最初の15年間を過ごした人は、オッズ比が3.23倍(95%信頼区間=1.26-8.29)
だった。この研究は、2 つの重要な結論に裏付けを与える。成人白血病も電磁場被曝に
関係があるということ、そして子どもの時の被曝は成人の病気のリスクを増やすという
ことだ。
 電機関連労働者と、職場で被曝する労働者の成人脳腫瘍のリスクが非常に大きいこと
が、Kheifets ら(1995)のメタ解析(大勢の人の研究の再検討)で報告された。これは
肺がんや間接喫煙とほぼ同じ大きさのリスクだ(US DHHS, 2006)。このメタ解析は、
12 か国で行なわれた29 の研究を含む。関連するリスクは、全脳腫瘍のリスクについて
1.16 倍(信頼区間=1.08-1.24)、または16%増加と報告された。神経こう腫については、
電気関連労働者で、リスク評価は1.39 倍(CI=1.07-1.82)、または39%のリスク
増加と報告された。Kheifets ら(2001)による2 回目のメタ解析は、1995 年以降に発表
された後、9 つの新しい研究結果を追加した。それは、1995 年からの相対的なリスク
評価における小さな変化を示す、新しい包括評価(オッズ比=1.16 倍、信頼区間
1.08-1.01)を報告した。

 被曝と乳がんの関連性についての証拠は、男性で比較的強く(Erren、2001)、いくつか
の研究(全てではない)は、被曝が増えると女性の乳がんも増える事を示す(12 章参照)。
脳腫瘍と聴神経腫は、被曝した人の間でもっと一般的だ(10 章参照)。その他のがんに
ついて発表された証拠は少ないが、Charles ら(2003)は、電磁場被曝が最も高い10%
に分類された労働者は、被曝量が少ないグループより、前立腺がんで2 倍死ぬようだと
報告した(オッズ比2.02 倍、95%信頼区間=1.34-3.04)。Villeneuve ら(2000)は、電磁場
に被曝する電気施設の労働者の間で非ホジキンリンパ腫(訳注:ホジキン病以外の悪性
リンパ腫の総称)が統計学的に有意に増加することを報告した。一方、Tynes ら(2003)
は、高圧送電線の近くに住む人の間で悪性メラノーマのリスク増加を報告した。これら
の結果は反復が必要だが、白血病以外の成人がんと被曝の関連性を示唆している。
 たとえ全ての報告が確実に同じポジティブな関連性を示さなかったとしても、全体的
に、電磁場被曝に関する成人の病気の科学的証拠は、予防的手段がふさわしい成人の
がんについて充分に強固だ。電磁場に関連性があるかもしれない病気のパターンを理解
する私たちの能力を、多くの要因が減らすので、これはとくに信頼できる:その要因とは、
例えば、比較するための被曝していない人口は存在しないこと、被曝評価のその他の
困難さ、電磁場被曝と成人のがんや神経変性の病気の関連性についての証拠は十分に
強く、今、電磁場被曝を減らす用心のための行動を起こすことに値すること。

5.乳がん
 ELF が関わる乳がんの科学的研究の多数の分野から、いくぶん強い証拠がある。過去
20 年間、男性と女性の両方でおびただしい疫学研究(人間の病気の研究)が行われて
たが、この関連性は科学者の間で議論の余地を残している。これらの研究の多くは、ELF
被曝が乳がんのリスク増加に関わると報告した(全ての研究がリスク増加を報告している
のではないが、同時に、私たちは科学的な結果の100%、または50%の一致でさえ期待
していないし、合理的な予防的行動を採るために一致を求めていない)。

 職場での女性に関する研究の証拠は、10mG以上の長期間の被曝で、電磁場が女性の
乳がんのリスク要因であることをいくぶん強く示す。

 比較的高いELF(10mG以上)に被曝して働く人々の乳がん研究は、この病気の率が
高いことを示す。ELF に被曝する労働者のほとんどの研究は、高い被曝レベルが
2~10mGのどこかにあることを明確にした。しかし、この種の比較的弱いELF 被曝と
比較的強いELF 被曝の混合は、まさに、現実のリスクレベルを弱めるために作用する。
多くの職場研究のグループ被曝で、最も高いグループは4mG以上だった。これが意味
するのは、a)少数の人々はもっと高いレベルに被曝し、b)病気のパターンは4mG以上
の比較的低いELF レベルで現われる、ということだ。これは、933~1000mGを対象にした
現在のELF 制限が、リスク増加を報告する被曝レベルと関係がないことを証明する
方法の一つだ。

 人間の乳がん細胞を対象にした実験研究は、6~12mGのELF 被曝が、乳がん細胞の
成長を抑えるメラトニンの防護反応を妨げることを示した。この10 年で、弱い環境レ
ベルでELF に被爆すると、人間の乳がん細胞が速く成長することが証明された。これ
は、ELF 被曝が体内のメラトニン濃度を減らす理由の考察になる。乳がんの培養細胞に
メラトニンが存在すると、がん細胞の成長を抑制することがわかっている。メラトニンが
無いと(ELF 被曝やそれ以外の理由によって)、より多くのがん細胞の成長につながる
ことが知られている。

 乳がん腫瘍のある動物を使った実験研究は、ELF と化学的腫瘍促進物質に同時に
曝すと、腫瘍がより多く、より大きくなることを示してきた。これらの研究は、総合すれば、
ELF がおそらく乳がんのリスク要因であること、そして重要なELF レベルは多くの
人々が家庭や職場で被曝しているレベルより高くないことを示す。リスクの論理的な
疑いが存在しており、そして、それは新しいELF 限度値を勧告し、予防的行動を正式に
認めるための十分な証拠になる。

 乳がんになる生涯のリスクが非常に高いこと、そして予防の決定的な重要性を考える
と、ELF 被曝は、高いELF 環境で長期間過ごす全ての人々のために減らすべきだ。

 ELF 被曝の減少は、乳がんになった人々にとって特に重要だ。2mGや3mGを超え
るELF 場で小児白血病の患者の生存率が低い証拠を考えると、療養環境のELF レベル
は低くするべきだ。乳がんのリスクが高いかもしれない、これらの人々のための予防的
行動も正当だと認められる(とくに乳がんになるリスクを減らすために、タモキシフェン
[訳注:抗腫瘍薬]を摂取している場合、ELF 被曝はこれらの低い被曝レベルと同じでも、
メラトニンだけでなく、タモキシフェンの有効性も減らすかもしれない)。乳がんとELF
被曝の関連性を裏付ける、私たちが既に持っている証拠の重要な部分を無視する
ことは許されない。この病気によって起きる莫大なコストと社会的、個人的負担を
考えると、決定的な証拠を待つことは支持できない。

 
 人間の乳がん細胞の研究といくつかの動物実験は、ELF が乳がんのリスク要因で
あるかもしれないことを示す。人間の乳がんの研究と同様、細胞研究や動物実験から、
乳がんとELF 被曝の関連性を裏付ける証拠がある。

 議論するためのがんの争点がいくつかある。電磁場被曝が全てのがんやその他の
病気の最終的な結果に関連性がある、または電磁場(ELFとRF の両方)への被曝で
いっそう悪くなるかもしれないという仮定を、今、作ることは理にかなっている。
 1 種類以上のがんに関連性があるなら、なぜ全てのがんのリスクが議論されないの
だろうか? 現在の知識の状態が人間の健康を除外したり妨げたりする、と主張すること
はもうできない。この問題に関わる予防的行動を採らないと、人々が苦しみ、莫大な
社会的コストが発生するので、現実の公衆衛生政策が必要だ。そして、政府機関が
手にしている証拠の根拠に基づいて、公衆衛生保護を行なうことが必要だ。

B.神経系と脳機能における変化
 電磁場への被曝は、アルツハイマー病や運動ニューロン疾患、パーキンソン病に
ついて研究されてきた(4)。これらの病気は全て、特定の神経の死を伴い、神経変性
疾患として分類されるだろう。高レベルのベータアミロイドたんぱく質はアルツハイマー病
のリスク要因で、ELF に被曝すると脳内でこの物質が増えるという証拠がある。
メラトニンがアルツハイマー病につながるダメージから脳を守るという考慮するべき証拠と、
ELF への被曝がメラトニン濃度を下げるという強固な証拠がある。そのため、アルツハイ
マー病の発症に対する体の主要な防護の一つ(メラトニン)は、ELF に被曝すると
利用できる量が少なくなる、という仮説が設けられる。ELF 場に長く被曝すると、神経
細胞の中のカルシウム(Ca2+)レベルが変わり、酸化ストレスが発生する(4)。
ELF への長い被曝は、発射と同時に起こる神経細胞(とくに、大きな運動神経)を
刺激し、毒性の増強によって損傷につながる可能性もある。
 被曝と神経変性疾患、アルツハイマー病、筋萎縮性側索硬化症(ALS)との関連性に
ついての証拠は、強固で比較的一貫している(12 章参照)。全ての論文が被曝と病気の
統計学的に有意な関連性を示しているわけではない。しかし、アルツハイマー病について
オッズ比2.3 倍(95%信頼区間=1.0-5.1、Qio ら、2004)、オッズ比2.3 倍(95 信頼区間=
1.6-3.3、Feychting ら、2003)、ALSについてオッズ比3.1 倍(95%信頼区間=1.0-9.8、
Savitz ら、1998)、オッズ比2.2 倍(95%信頼区間=1.0-4.7、Hakansson ら、2003)は、
単純に無視することはできない。

 アルツハイマー病は、神経系の疾患だ。長期間のELF 被曝がアルツハイマー病の
リスク要因だ、という強い証拠がある。

 てんかん性疾患のある人は、RF 被曝の影響をより多く受けやすいのではないか、
という懸念も高まっている。知られている他のストレッサー(訳注:ストレスを引き起
こす刺激)の神経学的影響の類似点に基づくと、弱いRF への被曝は、ストレッサー
になるかもしれない。弱いRF は、精神に影響を与える薬物と同様の経路で働く脳内の
他の物質と、体内で作られるオピオイド(訳注:麻酔)の両方を活性化する。実験動物
でのそのような影響は、中毒に関わる脳の部分の薬物影響によく似ている。
 実験研究は、人間と動物の神経系はどちらも、ELF とRF に敏感であることを示す。
脳機能と行動について測定可能な変化は、携帯電話の使用を含む新しい技術に関わる
被曝レベルで発生する。携帯電話電磁波に被曝すると、SAR値0.1W/kg と同じ低さで、
人間の脳波が活性化する。ちなみに、アメリカが認めたレベルは1.6W/kg で、国際非電離
放射線防護委員会(ICNIRP)が認めたレベルは2.0W/kg だ。それは記憶と学習、正常な
脳波活性に影響を与える。弱いELF とRF への被曝は、動物の行動を変化させることが
できる。

 携帯電話と携帯電話使用によって発生した電磁場が、脳の電気的活性に影響を
与える、という小さな疑念が存在する。

 脳機能の影響は、いくつかの例では、被曝している間の対象者の精神的な負荷に
よって決まるようだ(脳の同じ部分が二つの仕事に関わると、脳は同時に行なわれる
二つの仕事を上手くこなせなくなる)。いくつかの研究は、携帯電話への被曝が脳の
活性レベルを速くするが、同時に、脳の効率と判断力は低下することを示している。
ある研究は、10代のドライバーが携帯電話電磁波に被曝しながら運転している時、
高齢者と比べて反応速度が遅くなった、と報告した。考えるスピードが速いからといって、
より質の高い思考をしているとは限らない。

脳と神経系の反応の変化は、特定の被曝に非常に大きく依存する。大半の研究は
短期被曝の影響しか見ていないので、長期間被曝の結果はわかっていない。

 影響を決定する要因は、頭部の形と大きさ、位置、脳内組織の大きさと形、頭部と顔
の薄さ、組織の水和、さまざまな組織の厚さ、組織の誘電率などによって決まる。その
人の年齢や健康状態も、変動性が大きい要因だ。被曝状況も研究の結果に大きな影響を
与え、周波数や波形、被曝の方位、継続期間、電磁波発生源の数、信号のパルス変調、
いつ測定されたか(RF への反応は遅れる場合がある)によって、正反対の結果が出る。
ELF とRF テストの結果は変動性が大きく、テスト結果に影響を与える要因の変動性に
応じて予測されるだろう。しかし、いくつかの被曝状況の下で、人間の脳と神経系の機能
が変えられることは、はっきりと証明された。長期間の被曝、または延長された被曝の
結果は、成人でも子どもでも綿密に研究されていない。

 青年期の始めまで神経系が発達し続ける子どもに対する長期被曝の結果は、
今のところ、わかっていない。ELF とRFの両方に幼い者が数年間被曝すると、思考、判断、
記憶、学習、行動全体の管理に関わる能力が減少することにつながり、社会の機能と成人
の健康に対する深刻な暗示になる。

 弱い無線アンテナ電磁波に慢性的に被曝する人々は、睡眠障害(不眠)、疲労、頭痛、
めまい、ふらつき、集中困難、記憶障害、耳の中で音が鳴っている様な感覚(耳鳴り)、
バランスと方向の障害、マルチ・タスキング(訳注:同時または交互に複数の作業を行う
こと)の困難さ、といった症状を訴える。子どもの場合、携帯電話電磁波への被曝は、
記憶作業をしている間ずっと、脳の振幅活性が変化することにつながる。科学的な研究
は今のところ、原因と影響の関連性を裏付けることができないが、こられの病訴は、無線
技術がかなり発達し広く行き渡った国々(スウェーデン、デンマーク、ドイツ、イタリア、
スイス、オーストリア、ギリシャ、イスラエル)では一般的で、一般の人々の大きな懸念を
引き起こしている。例えば、新しい第三世代携帯電話(そしてオランダの地域広域アンテナ
RF 照射に関わる電話)の開始は、ほとんど同時に、一般の人々の病気の訴えを発生
させた(5)。
 行なわれてきた少数の研究結果が対立しているのは、国際的に被曝している環境と
比べるために、実験用の非被曝環境を作る難しさに基づいているかもしれない。研究の
ために実験室へ移動する人々は、多数のRF とELF に実験前に被曝する。そのため、
彼らは実際の実験をする前に、すでに被曝の兆候を示している。行動変化を実験するRF
被曝の結果は遅れて現れる、ということも事態を複雑にしている。影響はRF 被曝が終わ
った後で観察される。これは、神経系の継続する変化は、時間がたってから明らかになる
ので、短期間の実験では影響が観察されないことを示す。

 携帯電話タワーやアンテナからのRF 送信機への全身被曝、そして携帯電話や
その他の個人用機器からの被曝を含む、無線技術に長期間被曝した影響は、まだ確実に
わかっていないだけだ。しかし、すでにある証拠の主要な部分は、生体影響と健康影響
が、申し分無く低いレベルでも発生し、発生させることが可能だ、と示唆している。
影響が起きるレベルは、公衆安全限度値の数千分の一以下だ。

 その証拠は、深刻な公衆衛生の結果(そして経済的コスト)の可能性を論理的に示す。
その可能性は、一般の人々の広範な使用と、そのような電磁波への被曝で世界的な懸念
になるだろう。新しい無線被曝に関わる認識機能の消失や発症率のわずかな増加でさえ、
大きな公衆衛生の結果、経済的・個人的結果になるだろう。疫学研究は、被曝の数10年後
だけで健康への有害性を報告し、「平均的」な人口の中で大きな影響をとらえることができる。
そのため、有害な可能性があるという疫学研究の早期警告は、今、政策決定者に真剣に
受け止められるべきだ。

C.遺伝子(DNA)の影響
 がんのリスクはDNA損傷に関わりがあり、それは成長と発達に関わる遺伝子の
青写真を変える。DNAが傷つくと(遺伝子が傷つくと)、これらの傷ついた細胞が
死なない危険性がある。むしろ、傷ついたDNAで自身を再生産し続けるだろう。
これは、がんが発生する必須条件の一つだ。DNA修復の減少も、このストーリーの
重要な部分だ。
 DNAの修復率よりDNA損傷率が多くなると、遺伝子変異を保ち、がんを開始
する可能性がある。ELF とRF がどのように遺伝子とDNAに影響を与えるのかを、
調べた研究は重要だ。なぜなら、がんにつながる可能性があるからだ。
 10 年前でさえ、非常に弱いELF 場とRF 場は、DNAと細胞の働き(または細胞損傷
や、正確に働かなくなること)に全く影響がないだろう、とほとんどの人が信じていた。
その主張は、これらの弱い電磁場が損傷を起こすほどの十分なエネルギー(物理的に
十分に強くない)を持っていない、ということだった。しかし、私たちが既に知っている
ように、エネルギーは損傷を起こす重要な要因でなく、様々な方法がある。例えば、
毒性化学物質への曝露は、損傷を引き起こすことができる。体内のホルモンバランス
を含む、繊細な生物学的過程のバランスを変えることは、細胞を傷つけたり破壊したり
することができ、病気を発生させることができる。実際のところ、数多くの慢性疾患は、
加熱作用を全く必要としない、この種の損傷に直接結びつく。細胞コミュニケーション
(細胞が互いに作用する)の妨害は、直接、がんを引き起こすか、早く成長するために
すでに存在しているがんを促進させる。
 現在の遺伝子テスト技術を使うことは、どのように電磁場が体の分子に影響を与え、
標的にするのかについて、将来、役に立つ情報をおそらく与えるだろう。遺伝子レベル
で、電磁場(ELF とRF の両方)がどのようにDNAの働きに変化を起こすことができ
るのかについて、現在、いくつかの証拠がある。実験研究は、弱い電磁場が遺伝子と
たんぱく質の機能に影響を与えるのかどうか(そして、どのように影響を与えるか)を
知るために行なわれた。そのような変化は、いくつかの研究で見られたが、全ての
研究で見られたわけではない。
 たんぱく質や遺伝子発現の小さな変化は、細胞の生理機能を変え、健康とウェル・
ビーイングに、後で影響を与えることができるだろう。遺伝子、たんぱく質、DNAの
研究はまだ始まったばかりだ。しかし、弱い電磁場が記録を変えるという遺伝子レベル、
たんぱく質レベルでのいくつかの裏付けがあるで、何が健康リスクを引き起こすのかを
確定する重要な段階にあるかもしれない。
DNA、遺伝子、たんぱく質、電磁場に関する研究で注目に値するのは、電磁場が
損傷を発生させるには弱すぎるということが本当なら、全く影響が起きないはずだ
ということだ。電磁場のエネルギーは、害を起こすには無意味で重要ではないと
信じる科学者は、これらの変化を説明するのが難しいので、これらの変化を、ただ
無視するだけの傾向がある。この観点の問題は、影響が発生しているということだ。
これらの影響を説明できないといことは、影響が想像上のもので重要ではない、と
考える良い理由にならない。

 ヨーロッパの研究プログラム(REFLEX)は、DNAの実験で正常な生物学的機能の
多数の変化を証明した(3)。これらの結果で重要なのは、遺伝子やDNAでこれらの
変化が起きた時、人間の健康リスクが発生するかどうか、という疑問に直接結びつく
ことだ。この大規模な研究努力は、1 ダース以上の異なった研究結果から電磁場影響
に関する情報を生み出した。いくつかの重要な見解を下記に挙げる。

 「遺伝子の突然変異、細胞増殖、アポトーシス(訳注:細胞の自然死)は、遺伝子や
たんぱく質発現プロフィールの変化によって、またはその結果として発生する。これら
の出来事の集合は、全ての慢性疾患の発達について求められる」(3)。

 「電磁場被曝の後で、遺伝子毒性影響と無数の遺伝子とたんぱく質の発現が
変わることは、全く疑いなく証明できるだろう」(3)

 「RF 電磁場は、ラットの繊維芽細胞、HL-60 細胞、顆粒膜細胞(訳注:卵胞の細胞)、
マウスのES 細胞から誘発された神経前駆細胞で遺伝子毒性を作った」(協力者2,3,4)
(3)。

 「細胞は、頻繁に小核とDNAの単鎖または二重鎖破壊を有意に増やすSAR値
0.3~2W/kg のRF被曝に反応した」(協力者2,3,4)(3)。

 「RF 電磁場被曝に伴うHL-60 細胞でのフリーラジカルの細胞間世代の増加は、
はっきりと証明されるだろう」(協力者2)(3)。

 「誘発されたDNA損傷は熱効果に基づいておらず、ELF 電磁場被曝の環境安全
限度値について考慮するよう促す」(3)。

 「影響は、高齢者のドナーの細胞でより明らかに際立った。それは、DNA鎖破壊を
引き起こすELF 電磁場によるDNA修復有効性が、高齢なほど減ることを示す」(3)。

ELF とRF 被曝はどちらも、現在の安全限度値よりも低い被曝レベルを含む一定の
被曝状況下で、遺伝子毒性(DNAを傷つける)がある、と考えることができる。

D.ストレスたんぱく質(熱ショックたんぱく質)の影響
 ほとんど全ての生物に、環境毒物や環境に悪影響を与えるものから攻撃を受けると、
細胞で始まる特別な防御がある。これはストレス反応と呼ばれ、ストレスたんぱく質
(「熱ショックたんぱく質」としても知られる)を作る。植物、動物、バクテリアは、高温、
酸素不足、重金属汚染、酸化ストレス(早まった老化を起こす)のような環境ストレッ
サーを生き残るために、ストレスたんぱく質を作る。私たちは今、生理学的なストレス
反応を引き起こす環境ストレッサーのリストに、ELFとRF被曝を加えることができる。

 常に弱いELF とRF 被曝は、ストレスたんぱく質を作る細胞を発生させる。それは、
ELF とRF 被曝を有害なものとして細胞が認識したことを意味する。これは、科学者が
ELF とRF 被曝が有害なことを証明する重要な方法で、その影響は現在の公衆安全
基準より遥かに低いレベルで発生する。

 さらに加わった懸念は、ストレスがあまり長く続くと、防御効果が減ることだ。ストレスが
長く続くと反応は減少し、防御効果は低下する。これは、細胞が損傷に対して防御が
少ないこと、そして、非常に弱い被曝でも、長く続くまたは慢性的な被曝がきわめて
有害かもしれない理由を示唆する。

 防御反応を活性化する生物学的経路は、ELF もRF 被曝も同じで、非熱効果だ(非熱
効果は、体温上昇や電流誘導を起こさず、そのため熱効果からの防護に基づいた安全
基準は、的外れで防御できない)。わずか5~10mGのELF 被曝レベルが、ストレス反応
遺伝子が活性化することを示してきた(セクション6、表2)。SAR値は生物学的なし
きい値や量の適切な尺度ではなく、安全基準の根拠として使われるべきではない。
SARは熱損傷に対して規制するだけだからだ。

E. 免疫系の影響
 免疫系は、侵入する微生物(ウィルス、バクテリア、その他の外部の分子)に対する
もう一つの防御だ。それは、病気、感染症、腫瘍細胞から私たちを守る。数多くの種類
の免疫細胞が存在する。それぞれの細胞のタイプは特定の目的があり、体が有害だと
確認した、さまざまな暴露から体を守るために働き始める。

 現在の公衆安全基準で認められたレベルで、ELF とRF 被曝が、炎症性反応、アレルギー
反応、正常な免疫機能の変化を起こすことが可能だ、という十分な証拠がある。

 体の免疫防御システムは、ELF とRF被曝の危険性に気づき、ストレスたんぱく質を
作る体の反応のように、これらの電磁場を免疫防御の標的にする。非常に弱いELF と
RF 被曝が(a)細胞によって認識され、(b)まるで被曝が有害かのように反応を起こす、
という付加的な指標がある。アレルギーや免疫反応を増やす要因に慢性的に曝される
ことは、健康にとって有害なようだ。慢性的な炎症反応は、時間がたつと細胞間、組織、
器官の損傷につながる。多くの慢性疾患は、免疫系機能の慢性的な問題に関連性がある
と考えられている。
 
 ヒスタミンのような炎症性物質の放出は、皮膚反応や腫れ、アレルギー性敏感性、
防御メカニズムに関わるいくつかの正常な反応を起こすことがよく知られている。
人間の免疫系は、周囲の環境からの有害な曝露から守るための一般的な防御
バリアの一部だ。免疫系が何らかの攻撃で悪化する場合、数多くの種類の反応
する免疫細胞がある。免疫反応の引き金になるものは、慎重に評価されるべきだ。
慢性的な免疫系の刺激は、正常な方法で反応する免疫系の能力を、時間がたつと
損なうかもしれないからだ。

 測定できる生理学的変化(たとえば、皮膚のマスト細胞の増加は、アレルギー反応や
炎症性細胞反応の指標だ)は、非常に弱いELF やRF によって誘発される。ELF やRF
によって活性化するマスト細胞は、アレルギー性皮膚反応の症状を起こす炎症性化学
物質を放出し、破壊(脱顆粒反応)する。

 携帯電話やコンピューター、ビデオ・ディスプレイ・ターミナル、テレビの使用、その他の
発生源から生じるレベルのELFやRF への被曝が、これらの皮膚反応を引き起こすという
非常に明白な証拠がある。皮膚の敏感性での変化は、皮膚生検法によって測定されており、
その結果は注目に値する。これらの反応のいくつかは、日常生活の無線技術への被曝と
同等のレベルで起きる。マスト細胞は脳や心臓でも見られ、おそらく、ELF やRF 被曝への
細胞反応による免疫細胞の標的だ。そして、これは、一般的に報告された他の症状
(頭痛、光への過敏性、心臓不整脈、その他の心臓の症状)の説明になるだろう。
ELF やRF 被曝による慢性的な刺激は、被曝が長い間続くと、免疫の機能不全、
慢性的なアレルギー反応、炎症性疾患、病気につながる。

 これらの臨床的発見は、電磁波過敏症の人の報告の説明になるだろう。電磁波過敏症
は、どんなレベルのELF やRF 被曝にも耐えられない状態だ。十分な科学的評価(管理
された状況下で、もしそれが可能なら)はまだないが、多数の国からの個々の事例に
基づく報告は、おそらく人口の3~5%を電磁波過敏症と概算し、大きな問題になっている。
多種化学物質過敏症(訳注:身の回りの微量な化学物質に反応し、体調を崩す症候群)
のような電磁波過敏症は、発症者を無力にし、発症者は仕事や生活環境で徹底的な
変化を求められ、大きな経済的損失と個人の自由の消失に悩まされる。スウェーデンで
は、電磁波過敏症は完全な機能的損傷として公式に認められている(つまり、病気と
しては認められていない―セクション6 付表A参照)。

F. 信頼できそうな生物学的メカニズム
 信頼できそうな生物学的メカニズムは、弱いRF やELF 被曝について報告されたほ
とんどの生物学的影響の論理的な説明になることを、私たちは既に確認した(遺伝子
毒性につながるフリーラジカルからの酸化ストレスやDNA損傷。非常に低いエネルギー
で分子メカニズムは、病気につながるようだ。たとえば、酸化損傷につながる電子移動
率の影響、突然変異と異常な生合成に結びつくDNA活性)。伝統的な公衆衛生と疫学の
規定が、病気と電磁場被曝の因果関係を推論する前に、真実であることを証明する
メカニズムを求めないことを、思い出すのも大切だ(12)。メカニズムの証拠がわかる前に、
賢明な公衆衛生反応が実行されことは何度もある。
 「フリーラジカルによるDNA損傷が、人間のがんの大部分で初期の腫瘍安定状態と
考えられることを考慮すると、酸化損傷からDNAを守るメラトニンの能力は、白血病を
含む数多くのタイプのがんについて、明らかに含意がある。(Cerutti ら、1994)。がん
に加えて、中枢神経系へのフリーラジカル損傷は、アルツハイマー病やパーキンソン病
を含む老化した神経変性疾患の多様で重要な構成要素だ。これらの状態の実験動物
モデルで、メラトニンは発症を未然に防ぎ、症状の重さを軽減する有効性が高いことを
証明した(Reiter ら、2001)」(13)。

中枢神経系へのELF からの損傷を伴う病気とがんについて、DNAを傷つける
フリーラジカルの作用による酸化ストレスは、信頼できそうな生物学的メカニズムだ。

G. 電磁場を考えるもう一つの方法:治療的使用
 一定の種類の電磁場治療が実際にケガを治すことができると知ると、大勢の人が驚く。
骨折を治すのを助けるために、皮膚や皮下組織のケガを治すために、痛みや腫れを
減らすために、そして、その他の手術後の必要性から、特定の方法で電磁場を使う
医学的治療がある。電磁場被曝のいくつかの形は、うつ病を治すために使われた。

 電磁場は、現在の公衆被曝基準より遥かに低いエネルギーレベルで、病気の治療に
有効性があることを示してきた。これは明らかに疑問につながる。科学者は、体を治す
ことを証明する電磁場治療を利用する一方で、電磁場被曝の有害影響をどのように
議論することができるのか?
 医学的状態は、現在の公衆衛生基準より低いレベルの電磁場を使って治療に
成功した。これは、体が弱い電磁場信号を認識し、反応することを証明する方法の
一つだ。そうでなければ、これらの医学的治療は働くことができない。
FDA(訳注:米国食品医薬品局)は電磁場の医学的治療装置を承認しているので、
明らかにこの逆説に気づいている。

 監督して治療を行なう電磁場被曝とは対照的に、電磁場へのランダムな被曝は、薬局
の薬が管理されずに使われる有害性につながるだろう。この証拠は、無計画の電磁場
被曝が、おそらく悪い考えだという強い警告を形成する。

 医学的治療と病気の予防における薬物の使用が、一般の人々、とくに子どもに
ランダムに与えられることを勧める人はいないだろう。けれども、ランダムで不本意
な電磁場被曝が、日常生活の中でいつも起きている。

 電磁場被曝の蓄積や被曝の潜在的に有害な組み合わせを考えない、日常生活にある
多様な被曝発生源の結果が、いくつかのことを示している。第一に、被曝していない人を
見つけることがほとんど不可能なので、治療研究を行うことが非常に難しい。第二に、
病気のある人、無い人は、多様で重なり合う被曝状況に置かれている――被曝状況は
人によって異なる。

 ちょうど、電離放射線が病気の診断とがんの治療に効果的に使われているように、
異なった被曝状況下で電磁波はがんの原因にもなる。電磁場は病気の原因になるし、
病気の治療にも使われる。公衆被曝基準が電磁場被曝の生物学的効能に関する
私たちの現在の知識を反映すること、そして、将来の被曝を防ぐ方法と、新しい公衆
安全限度値を作ることは、生命に関わる重要事項だ。

V.電磁場被曝と慎重な公衆衛生計画
・ 科学的証拠は、ELF を規制する行動の正当な理由になるために十分に存在する。
そしてそれは、RF の予防的行動を正式に許可するために十分強固だ。
・ 行動を起こす緊急の科学的証拠の必要性を判断する証拠の基準は、健康への影響と
ウェル-ビーイングに釣り合うべきだ。
・ 被曝は広範囲に広がっている。
・ 科学を判断するための広く受け入れられた基準が、この評価で使われている。
 電磁波(送電線周波数、無線周波数とマイクロ波)への公衆被曝は、世界的に急激に
増えている。発展途上国の田舎でさえ、電力使用が急増している。社会のほとんどの
メンバーは、今や、コードレス電話、携帯電話、ペイジャー(訳注:メッセージを受け取ると
振動して知らせる電子機器)を所有し使用している。それに加えて、ほとんどの人は、
無線RF信号を送信するために設計された、その地域にある通信アンテナにも被曝
している。いくつかの発展途上国は、携帯電話の簡単なアクセスと費用のせいで、
地上通信線の設置をあきらめてさえいる。そのような著しく増加するRF への長期間で
蓄積した被曝は、人類の歴史の中で前例がない。さらに、最も断言された変化は、
携帯電話を使って当たり前のように毎日数時間を過ごす、子どもたちに関するものだ。
全ての人が、大きな、または少ない範囲で被曝している。被曝を避けられる人はいない。
たとえ、電気を使わずに山の上で生活していても、通信周波数のRF に被曝するだろう。
傷つきやすい人たち(妊娠した女性、非常に幼い子ども、高齢者、貧困者)は、一般の
人々と同じ度合いで被曝する。したがって、リスクを評価し被曝を減らす方法を良く考える
ことが絶対に必要だ。良い公衆衛生政策は、有害リスクの潜在的な可能性と、行動を
起こさなかった場合の公衆衛生の結果に釣り合った予防的行動を求める。

W. 勧告された行動
A. ELF に関する新しい被曝基準の定義
 この章は、現在ある科学的証拠全体の公衆衛生的な分析に基づいて、新しいELF
限度値が正式に認められる、と結論を下す。公衆衛生の見解は、新しいELF 限度値が
今、必要だということだ。新しい限度値は、小児白血病やその他のがん、神経変性
疾患の可能性が増加するリスクが証明されてきたELF の環境レベルを反映するべきだ。
ELF 限度値は、病気のリスクが増えた小児白血病研究に関連する被曝レベル以下に、
付加的な安全要因を加えて設定するべきだ。危険性があると証明されたELF環境に
人々を曝す、新しい送電線や電力設備を建設することはもう受け入れられない。
それらのレベルは2~4mG帯で、10mG代や100mG代ではない。ELF について1000mG
(アメリカでは904mG)という現在のICNIRP 限度値は、時代遅れで間違った仮定に
基づいている。これらの限度値は、もはや公衆衛生を守ると言えず、置き換えられる
べきだ。安全な緩衝材や安全要因も、新しい、生物学に基づいたELF 限度値を用いる
べきで、規格通りのアプローチがリスクレベルよりも低い安全要因を加える。
 新しいELF 限度値が作られ実行されるまでの間、合理的なアプローチは、全ての
新しい、または増設する送電線の近くの居住空間用に計画する限度値は1mGで、
それ以外の新しい建築物の限度値は2mGだろう。子どもや妊娠した女性がいる居住
空間用に1mGの限度値が設けられることも勧告される(ELF への子宮内での被曝と
小児白血病の潜在的な関連性があるからだ)。この勧告は、自分で身を守ることが
できない子どもたちや、規制行動の引き金になる伝統的に十分に高い率で小児白血病
のリスクを持つ子どもたちのために、防護の高い責務が求められるという前提に基づいて
いる。とくに、この状況は、居住空間に1mGの限度値が適用される範囲を広げることを
保証する。この場合の「制定」は、おそらく、関連する健康機関の公式な公開された
報告を意味する。
 短期間で、現在ある全ての電気配線システムを再建するのは現実的ではないが、
とくに子どもたちが過ごす場所で、これらの現存するシステムから被曝を減らす処置が
始められ、奨励されるべきだ。これらの制限は小児白血病のリスク増加に一般的に
関わる被曝(全ての子どもで2~5mG帯、6 歳以下の子どもで1.4mG以上)を反映するべきだ。
成人がんと神経変性疾患に関するほとんど全ての職場研究は、最も高い被曝分類は4mG
以上だと報告している。そのため、新しいELF 限度値は職場の被曝範囲を対象にするべきで、
高い範囲は必要ではない。
 病気のリスク増加に関わるレベル以上での慢性的なELF 被曝を学校や家、職場で
避けることは、関係文献で議論されたELF の潜在的な生物活性条件のほとんどを避ける
ことにもなるだろう。

B. RF に関する新しい被曝基準の定義
 利用できる科学的証拠を考えると(セクション17)、生物影響を起こすと報告された
レベルでパルス波のRF へ慢性的に人々を被曝させ、次いで、深刻な健康影響に
つながると論理的に推定される新しい無線技術の急速な開発は、公衆衛生上の懸念だ。
セクション17 は、予防的行動が一般の人々のRF 被曝を減らす、または最小限にする
ことを正式に認める公衆衛生勧告に至った証拠を要約した。それは、現在の規制
限度値以下の被曝レベルで、RF 被曝が細胞膜の機能や細胞コミュニケーション、
細胞代謝、最初のがん遺伝子の活性化で変化を起こすかもしれず、ストレスたんぱく質
の産生を誘発することを強く暗示する証拠を示す。結果として起きる影響は、DNA損傷と
染色体逸脱、脳神経の死を含む細胞死、フリーラジカル産生の増加、内発的なオピオイド
系の活性化、細胞ストレスと早まった老化、記憶消失を含む脳機能の変化、子どもの
学習や運動機能の遅れ、子どものその他の行動損傷、頭痛、疲労、睡眠障害、神経変性
状態、メラトニン分泌の減少とがんを含む(セクション5、6、7、8、9、10、12)。
 2000 年頃、生体電磁気学の何人かの専門家が、パルス波のRF への環境中の屋外
での被曝について0.1μW/.(約0.614V/m)限度値を奨励した。市街地では一般的に、
パルス波の無線周波数(たとえば、携帯電話タワー、その他の無線技術)への不本意な
被曝から十分に守られるだろう。2000 年のザルツブルグ決議は、パルス波の無線周波数へ
の公衆被曝について0.1μW/.(約0.614V/m)の目標を設定した(訳注:オーストリア、
ザルツブルグ州は、2002 年2 月、屋外で0.001μW/.、屋内で0.0001μW/.という、
さらに厳しい値を勧告している)。それ以来、弱いレベルの無線送信機(無線の音声、
データ通信アンテナ)の近くに住む人の間で、体調不良や病気の数多くの信用できる
事例報告がある。その影響は、睡眠障害、記憶力と集中力の損傷、疲労、頭痛、皮膚障害、
視覚症状(飛蚊症)、吐き気、食欲不振、耳鳴り、心臓の問題(鼓動が速くなる)を含む。
携帯電話タワーのRF 被曝レベル(概算で0.01~0.5μW/.)が、無線アンテナ基地局
から数百m.以内に住む人々を病気にする影響を作るという研究報告で、いくつかの信用
できる文献がある。
 この資料は今、全身被曝に関する現在のFCCやICNIRP の基準より十分に低い
ガイドラインやしきい値について論じる。公衆衛生の見地から慎重になるために、
そのような基準をどのくらい低くしなくてはいけないか、という不確実性があるけれども、
不確実性を理由にして、現在利用できる情報に対応する正当な努力を妨げるべきではない。
RF の有害な健康影響と生体影響について、低い限度値は確立されていない。例えば、
無線LANとWI-FI システムの潜在的な健康リスクは更なる研究が必要で、どんなレベ
ルでの無線被曝(慢性被曝)も現在、安全性を主張することができないからだ。報告された
人間の健康影響についての低い限度値は、携帯電話とPDAの場合、安全基準の100
分の1、離れた携帯電話タワー、WI-FI、無線LAN機器の場合は1000 分の1 から
10000分の1に引き下げた。安全基準のための十分な根拠は疑問を出現させ、どんな
レベルでもRF の安全性を問うことは不適当ではない。
 携帯電話アンテナ、WI-FI、WI-MAX からのRF 発生源、その他の同様の発生源に
適用される、周囲の無線に関するパルス波RF 被曝のための警告的な目標 レベルが
提案された。これらの被曝が一般の人々に影響を与えるパルス波のRF について、
勧告される警告的な目標レベルは、0.1μW/.(約0.614V/m)だ。屋外の累積的なRF
被曝について、0.1μW/.(約0.614V/m)の予防的制限が採用されるべきだ。これは
現在のRF 科学と、人々が暮らし、働き、通学する場所でのパルス波のRF(環境)被曝
について適切に定められる慎重な公衆衛生上の対応を反映する。環境中のRF レベル
は全身被曝として経験され、携帯電話やペイジャー、PDAやその他の無線周波数電磁波
の発生源の音声やデータ送信の無線サービスエリアのある場所で、人々を慢性的に
被曝させる。0.1μW/.の屋外の予防限度値は、屋内ではおそらく0.01μW/.と同じくらい
低くなることを意味する(訳注:欧州に多い石造りの家は、屋内で大幅に被曝量が減るが、
日本で一般的な薄い木材を利用した家屋は、被曝量が屋外とほとんど変わらない)。
病気に関する数多くの個々の事例に基づく報告といくつかの研究が、これよりも低い
レベルで報告されてきた。しかし、目標レベルは今のところ、そのような設備の最も近く
にいる人々の、もっとも不釣り合いな負荷を、いくらか防ぐことができるだろう。
 このRF 目標レベルは、WI-FI 技術の更なる新製品の公開を妨げないが、私たちは
WI-FI に変わって有線が、とくに学校や図書館で設置されることも勧める。潜在的な
健康影響についてもっと多くのことがわかるまで、子どもたちが上昇するRF レベルに
影響を受けないようにするためだ。この勧告は、一時的な予防的限度値として理解される
べきだ。予防的行動が導かれることを意図しており、将来はさらに慎重な限度値が必要
とされるだろう。
 AM、FM、テレビアンテナ送信からの上昇するRFレベルに近隣の住民を慢性的に
被曝させる放送施設も、携帯電話などの無線周波数送信施設(アンテナ群)に近い、
非常に高いRF 被曝の可能性を与えているという公衆衛生上の懸念がある。いくつかの
送信施設から半マイル(訳注:約800m.)以内の居住地域では、RF レベルは数十から
数百μW/.になるだろう(たとえば、コロラド州のルックアウトマウンテンやオレゴン州の
ベンドのオウベリー・ビュッテなど)。強いRF レベルに学校や居住者を被曝させ、被爆
させる場所に位置するそのような施設は、安全性のために再評価される必要がある。
 無線機器(携帯電話、個人用デジタル・アシスタント、PDA機器等)からの照射について、
今や、それらの機器使用に対する介入が正式に認められる、脳腫瘍や聴神経腫の
リスクを増やす十分な証拠がある。携帯電話やPDAの再設計は、例えば、有線のヘッド
セットやスピーカーホーン・モードでだけ作動するような新しい装置の設計によって、
直接的な頭や目への被曝を防ぐことができるだろう。
 これらの影響は、慢性的でコントロールできない被曝のせいで病気や健康に有害な
影響につながり、子どもたちはとくに傷つきやすい、と論理的に推定できる。幼いものは、
たいていの場合、そのような環境から自分で移動することができない。間接喫煙のような
間接的な電磁波は、利用できる証拠に基づく公衆衛生上の懸念の問題点だ。

X.結論
・ 私たちには、「いつも通りのビジネス」をする余裕はもう無い。新しい送電線を計画
する時、そしてそれらの周辺に家、学校、その他の居住施設を計画する時、低いELF
環境のための慣例的な準備が行なわれる時が来た。新しい無線機器を、いつも通りの
ビジネスで配置することは、社会が限度値についてすぐに啓蒙的な決定をしなければ、
変更するのが難しく、リスクがあるように見える。新しい無線技術に関わるRF 被曝の
どのレベルが受け入れられるのか、明確にするために研究を続けなくてはいけない。
しかし、更なる研究が明日の生活と社会の混乱、金銭を守る実際の変化を、今日、
妨げ、遅らせてはいけない。

・ ELF の新しい規制限度値が正式に認められる。ELF 限度値は、病気のリスクを増や
す小児白血病研究で結びつけられた被曝レベル以下に合わせ、付加的な安全要因を加え
るべきだ。危険性があると確定されたELF 環境(通常2mG以上のレベル)に人々を曝す、
新しい送電線や電気設備を建てることは、もはや受け入れられない。

・ 新しいELF 限度値が作られ実行される間、合理的なアプローチは、全ての新しい、
または増設する送電線に近い居住空間用に計画する限度値は1mGで、それ以外の
新しい建築物の限度値は2mGだろう。子どもや妊娠した女性がいる居住空間用に1mGの
限度値が設けられることも勧告される。この勧告は、自分で身を守ることができない子ども
たちや、規制行動の引き金になる伝統的に十分に高い率で小児白血病のリスクを持つ
子どもたちのために、防護の高い責務が求められるという前提に基づいている。この
状況はとくに、居住空間に1mGの限度値が適用される範囲を広げることを保証する。
この場合の「制定」は、おそらく、関連する健康機関からの公式な公開された報告を
意味する。

・ 短期間で、現在ある全ての電気配線システムを再建するのは現実的ではないが、
とくに子どもたちが過ごす場所で、これらの現存するシステムから被曝を減らす処置が
始められ、奨励されるべきだ。

・ 屋外の累積的なRF 被曝について、0.1μW/.(約0.614V/m)の予防的限度値が採
用されるべきだ。これは現在のRF 科学と慎重な公衆衛生上の対応を反映する。それは、
人々が暮らし、働き、通学する場所でのパルス波のRF(環境)被曝について正当に定め
られるだろう。RF のこのレベルは、全身被曝として経験され、携帯電話やペイジャー、
PDAやその他の無線周波数電磁波の発生源に関する音声やデータ送信の無線サービス
エリアのある場所で、人々を慢性的に被曝させる。病気に関する数多くの個々の事例に
基づく報告といくつかの研究が、これよりも低いレベルで報告されてきた。しかし、
この目標レベルは今のところ、そのような設備の最も近くにいる人々の、もっとも不釣り
合いな負荷をいくらか防ぐことができるだろう。このRF 目標レベルは、WI-FI 技術の更なる
新製品の公開を妨げないが、私たちはWI-FI に変わって有線が、とくに学校や図書館で
設置されることも勧める。子どもたちは、潜在的な健康影響についてもっと多くのことが
わかるまで、子どもたちが上昇するRF レベルに影響を受けないようにするためだ。
この勧告は、一時的な予防的限度値として理解されるべきだ。予防的行動が導かれる
ことを意図しており、将来はさらに用心深い限度値が必要とされるだろう。

Y.参考文献
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セクション18 バイオイニシエィティブ協力者のリスト

構成委員メンバー
Carl F. Blackman *, 博士
生体電磁気学会の創設者、元会長、正会員
アメリカ、ノースカロライナ州、ローリー
*表明された意見は、必ずしも彼の勤務先の米国環境保護庁のものであるとは限らない。

Martin Blank, 博士、準教授
生体電磁気学会元会長、正会員
コロンビア大学、内科医・外科医カレッジ、生理学部
アメリカ、ニューヨーク州、ニューヨーク

Michael Kundi 教授、博士
生体電磁気学会正会員
ウィーン医科大学、環境健康研究所
オーストリア、ウィーン

Cindy Sage, 文学博士、オーナー
生体電磁気学会正会員
セージ・アソシエイツ
アメリカ、カリフォルニア州、サンタバーバラ

協力者
David O. Carpenter, 医師
アルバニー東キャンパス大学健康環境研究所、ディレクター
アメリカ、ニューヨーク、レンセラー

Zoreh Davanipour、博士、獣医学博士
フレンズ調査研究所
アメリカ、カリフォルニア州、ロサンジェルス

David Gee、プログラム責任者
欧州環境庁、緊急論点と科学的連絡、戦略的知識と革新のコーディネーター
デンマーク、コペンハーゲン

Lennart Hardell, 医師、博士、教授
大学病院腫瘍学部
スウェーデン、オレベロ

Olle Johansson、博士、准教授
カロリンスカ研究所、神経科学部、実験的皮膚科学課
スウェーデン、ストックホルム

Henry Lai、博士
ワシントン大学生物工学部
アメリカ、ワシントン州、シアトル

Kjell Hansson Mild、博士、教授
生体電磁気学会元代表、正会員
ヨーロッパ生体電磁気学会(EBEA)役員
ウメア大学放射線物理学部
スウェーデン、ウメア

Amy Sage, 調査員
セージ・アソシエイツ
アメリカ、カリフォルニア州、サンタバーバラ

Eugene L. Sobel、博士
フレンズ調査研究所
アメリカ、カリフォルニア州、ロサンジェルス

Zhengping Xu,博士
Guangdi Chen,博士
ゼジャン大学医学校、生体電磁気学研究所
中華人民共和国、杭州

評者(一部)
James B. Burch,博士
サウスカロライナ大学、公衆衛生アーノルド校
アメリカ、サウスカロライナ州、コロンビア

Nancy Evans, 理学士
健康科学コンサルタント
アメリカ、カリフォルニア州、サンフランシスコ

Stanton Glanz、博士
サンフランシスコ、カリフォルニア大学
タバコ管理調査教育センター
心臓血管調査研究所、公衆政策研究論文研究所
アメリカ、カリフォルニア州、サンフランシスコ

Denis Henshaw, 博士
物理学教授
ブリストル大学、ウィルズ物理研究所、人間放射線影響グループ
イギリス、ブリストル

Samuel Milham, 医師
ワシントン州衛生局(退職)
ワシントン、オリンピア

Louis Slesin、博士
マイクロウェーブ・ニュース
アメリカ、ニューヨーク州、ニューヨーク


(訳:加藤やすこ 環境ジャーナリスト、VOC-電磁波対策研究会代表)